カラミ煉瓦ふたたび

銅カラミは銅の製錬過程で出されるカスです。銅を製錬すればするほどカラミというカスが出てきます。カラミがセメントやコンクリート建材などへの需要が生まれる前の明治から昭和初期にかけて、尾小屋鉱山と尾小屋の住民は、このカスを捨てずに一つ50kgから80kgもある煉瓦に成形して、擁壁、排水路、蔵、地下蔵、建物の基礎、鉄道線路の敷石など、生活インフラに再利用しました。
高度経済成長期の真っ只中、尾小屋鉱山は閉山し、最盛期には尾小屋周辺には5,000人以上(鉱山域だけでは3,000人ほど)住んでいた人々の多くは他の土地へ移り、カラミ煉瓦群と人々の生活跡は徐々に草生して行きました。
尾小屋カラミの街が人々の記憶から消え去りつつあった令和の時代、草木に埋もれていたカラミ煉瓦群は尾小屋鉱山資料館のスタッフと「なつかしの尾小屋鉄道を守る会」のボランティアの皆さんによる地道な整備活動によって鉱山最盛期当時さながらの威光を再び発し始めました。これらの活動を継続し、カラミ煉瓦をはじめとする鉱山遺構を後世に遺すために2021年3月に特定非営利活動法人カラミの街保存会が設立されました。

ひっそりと静かな街で再び姿を現したカラミ煉瓦群。それらを見ていると、鉱山の活気で賑わった街や、そこで生まれ、育ち、働き、遊び、生きていた人々の息吹を感じることが出来ます。また、重い重いカラミ煉瓦を街のあちこちで積み上げ、生活の中に組み入れた当時の尾小屋の人々の創意工夫と実直さに尊敬の念を抱かずにはいられません。

カラミの街は石川県小松市尾小屋町にあります。市街地からは少し遠いところにありますが、陽の光に燦然と黒光するカラミ、雨に濡れて渋く黒々としたカラミ、雪とのコントラストが印象的なカラミなど、実物をご覧になって、カラミの魅力と鉱山で生活していた人々の息吹を感じ取ってみられては如何でしょうか?